【鬼滅の刃】作者・主題歌・音楽がすべて女性なのに鬼滅がフェミニストに歓迎されない理由
2019年に大ヒットした『鬼滅の刃』ですが、女性の活躍という視点から見ると特筆すべき点がいくつもあります。
まず作者が女性であるということ。連載デビュー作かつ、ジャンプというのは聞いたことがありません。
ジャンプの女性漫画家といえば……『DEATH NOTE』大場つぐみさんは原作なので違います。
主題歌が女性というのはアニメでは珍しくないですが、LiSAと同じようにソロで紅白歌合戦に出場した『進撃の巨人』Linked Horizonは男性でした。
音楽の梶浦由記さんはNHKの歴史秘話ヒストリアや、まどマギSAOといった一時代をつくった超人気アニメを担当しています。
しかし、『鬼滅の刃』を称賛するフェミニストは見受けられません。なぜでしょうか。
舞台設定とストーリーの問題
大正時代の日本が舞台で、家父長制度が旧民法で強固に規定されたばかり(民法制定から10数年後)の時代です。
設定
当然のように女性の地位は江戸時代のまま低く、身売りに出されるなど男性の都合で振り回されます。運よく夫婦円満であっても、出産の負担からそのまま床離れできずに亡くなるケースも多かったようです。
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貧しい一般人は特にそうで、遊郭で身ごもった女性は店から追い出され、その子は身寄りのないまま多くが死んでいきました。
堕姫、妓夫太郎はその顕著な例と言えるでしょう。いわばスラムに似た環境に置かれていました。
ストーリー
主人公の父親・炭十郎を失い、女手一つで立派に育て上げていた炭治郎の母・葵枝。しかし鬼に襲われて子供を守り切れずに、助かったのは炭治郎と妹の襧豆子二人だけです。同様に、父親を亡くしていた不死川家でも鬼に襲撃されて不死川兄弟以外全滅してしまいます。
竈門家との相違点は2つあって、不死川家では母親が鬼になったことと女兄弟が全員死んだことです。
母親が鬼になったのは、夫に暴力を振るわれていたことが理由にあるかもしれませんね。
竃門家では母親は鬼になっていませんから、男性に苦しめられた女性は鬼になるという示唆がうかがえます。
鬼側の女性
鬼に血を分けられることで鬼と化すわけですが、作中で主人公を追い詰めるレベルの強力な鬼となったのは男性のみです。
十二鬼月のメンバーの上弦の壱 黒死牟(こくしぼう)上弦の弐 童磨(どうま)上弦の参 猗窩座(あかざ)上弦の肆 半天狗(はんてんぐ)上弦の伍 玉壺(ぎょっこ)上弦の陸 堕姫(だき)・妓夫太郎(ぎゆうたろう)の7人のうち1人。
下弦の壱 魘夢(えんむ)下弦の弐 轆轤(ろくろ)下弦の参 病葉(わくらば)下弦の肆 零余子(むかご)下弦の伍 累(るい) 下弦の陸 釜鵺(かまぬえ)に至っても6人中1人となっています。
鬼となった女性のうち、最高ランクの強さを獲得できたのは13人のうち2人を占めるに過ぎないということです。
これは内閣の女性閣僚の比率に似ていますね。政治に対する皮肉のようにも思えます。
女性の柱
9人いる柱の内、胡蝶しのぶと甘露寺蜜璃の2人だけが女性です。柱の位置づけとしては、活躍した鬼殺隊の隊士が選出されるので実力がそのまま反映されることになっています。
つまりは会社での出世と結びつけて考えていいわけですね。
企業に部があるように、鬼滅の刃の鬼殺隊でも流派に1人まで柱になれるという風に決まっています。
重要な問題があります。それは鬼滅の刃ではテーマにしたくないからか、次期柱にあたるポジションの隊士が描かれていないのです。(花柱は胡蝶カナエが殉職していて不在のため栗花落カナヲは除外)
すると女性が不当に評価されているだとか、男だから優先されたのかどうか判断がつかないことになります。
素直に受けとると、女性で功績を残せた隊士は蟲の呼吸・胡蝶しのぶと恋の呼吸・甘露寺蜜璃の2人ということ。
あれ?おかしくないですか?蟲の呼吸と恋の呼吸はそれぞれ2人が開発したいわばオリジナル流派です。
他の隊士が伝統的呼吸を使用しているのに、2人は2人にしかできない固有の呼吸で成果を出したということになります。
すると後継者がいませんね。同じ呼吸で弟子にあたる女性隊士はおらず、一代限りの柱と見ることができます。
それってただの名誉職なのでは?どうせこいつだけだから、文句出ないように柱にしとけみたいな……。
順当に成果を出すだけじゃダメで、特許に当たるような新規性がある流派を開発して、やっと柱に認められるってどうなんでしょうか。
他の柱たちは既存のレールに乗っかって(例外はありますが)柱合会議(取締役会)に参加できるようになるのに、女性の隊士は出世ルートを自ら切り開かないと光明が見えない。
これは現状の企業での女性の出世のしにくさが反映されているように思えてなりません。
ジャンプの都合
週刊少年ジャンプという雑誌はその名の通り少年向けのマンガです。吾峠呼世晴先生は女性ですが、掲載する以上青少年好みの漫画を描く必要があったといえます。
ジャンプのバトル物のお決まり
一般にジャンプでバトル物をやるには、『ドラゴンボール』のようなイメージがいいでしょう。
最初は弱かった主人公が、ヒロインと出会い、仲間と絆を深めて強くなっていき、強敵を倒すというものです。
『封神演義』『ワンピース』『ナルト』でもそうでしたが、近年、実は主人公血統が良かったのよーという展開が多くあります。
それはあまりに主人公が強くなりすぎて、物語の世界と整合性がとれなってしまうためです。
『鬼滅の刃』も主人公だけ日の呼吸が使えるような血統でした。ずるいといえばずるいですが、おおよそ許容範囲のお約束のようなものでしょう。
ジャンプの女性キャラのお決まり
そしてヒロインはじめとする女性キャラの扱いにもお決まりがあります。かわいくあること。そして主人公が庇護する対象になりうる存在であること。そして巨乳ボインキャラ。
『ワンピース』で言うならナミ、ビビ(アラバスタ)、ハンコック。『ナルト』ならサクラ、ヒナタあたりでしょうか。
『鬼滅の刃』の場合は襧豆子、栗花落カナヲ、胡蝶しのぶ、甘露寺蜜璃にあたります。
なかでも甘露寺蜜璃に対するフェミニストからのバッシングが強烈でした。
奇乳で露出が過剰で、男性に守られる存在で、都合のいいキャラクターだそうです。
あまり読み込んでいないにわか発言だったと記憶しています。
ジャンプを擁護しておくと、アクタージュという女性主人公の作品が人気を集めています。
週刊少年ジャンプも時代の潮流に合わせて、変わっていこうとしている途上なのではないでしょうか。
だとしても、人気になり過ぎた反面、思わぬ偏見・差別意識が浮き彫りになっている感があることは確かです。
アニメの音楽はだれのもの
鬼滅の刃の音楽を担当している梶浦由記さんは、2010年代のアニメ音楽シーンをかっさらってきたといっても過言ではないくらいの人気作に関わってきました。2011年のまどマギ、Fate/Zero。2012年のSAO、2014年のFate/stay night [UBW]。2016年の僕だけがいない街、2019年の鬼滅の刃という流れです。
アニメに疎い人ですら知っているような作品の音楽を手掛けています。
鬼滅の刃では劇中の音楽と、EDを担当。紅蓮華や竈門炭治郎のうたほどにはヒットしませんでしたが、EDのfrom the edgeも十分に人気曲です。
ただ、いつものufotable作品では梶浦さんひとりで音楽を担当されているのに、なぜ鬼滅の刃では椎名豪さんとの共同担当になったのでしょうか。
椎名豪さんも梶浦さんと同じようにufotable作品を任されてきた音楽家です。したがって一人でやるには負担が大きいと判断された、と予想するのが妥当ですが、実際のところはどうでしょう。
2019年、梶浦由記さんは劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] 第2章 lost butterfly、ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-、ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld の音楽も担当していました。
独立したてとは言え、すさまじい仕事量です。
Fate、エルメロイ、SAOは今までに担当してきた関連作品なので制作はしやすかったでしょうが、同じ曲を提供するわけにはいきません。
仕事量を考慮して、共同で担当ということになったと考えるのが自然でしょう。
ちなみに大ヒットを博した主題歌・紅蓮華はLiSAで、作曲は草野華余子さんと女性だけで作られています。椎名豪さん作曲の竈門炭治郎のうたは、中川奈美さんが歌っています。
劇場版では梶浦さんの曲がヒットすることを願って!締めとします
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